子ども向け無料プログラミング教室、CoderDojoとは? 運営者に話を聞いてみた!
こんにちは。プログラミングはからっきしのヨシダです。
最近、中学校の授業でプログラミングが必修になっているため、子ども向けのプログラミング教室が増えているそうです。
なかでも、子どもに無料でプログラミングを教えるCoderDojoという活動が広まっています。
CoderDojo。
漢字で「道場」ではなく、アルファベッドで「Dojo」。
おまけに無料。
んんー?なんか気になる…。
というわけで、今回はCoderDojoについて調べてみました。
なんと、CoderDojo運営者の方にお話を伺うことも出来ました!
もくじ
1.CoderDojoとは?
2.CoderDojoは、どんなことをしているの?
3.CoderDojo西宮/梅田の運営者に話を聞いてみた
3-1.CoderDojo運営を始めたきっかけ
3-2.やりたいことがあるなら、0人参加でも継続すること
3-3.CoderDojoと、プログラミング教室の違い
3-4.子どもたちが気軽に近くのDojoに行けるように
3-5.メンターが足りない
4.最後に
1.CoderDojoとは?
CoderDojo(コーダードウジョウ)は、子どものための無料プログラミング道場です。コーダーとは、プログラミングコードを書く人のことです。コーダーとプログラマーは厳密には異なりますが、大まかには同義と考えて差し支えありません。
CoderDojoでは7~17歳の子どもを対象に、初心者向けプログラミング言語であるScratchを使ったゲーム作成、HTML・CSS・JavaScriptを使ったWEB制作などを無料で教えています。
メンター(先生)は、プロのプログラマーや、プログラミングの知識がある大人たちです。完全に非営利で運営されており、メンターは全員ボランティアです。
CoderDojo が始まったのは、2011年アイルランド。その後、ヨーロッパを中心に世界中に広がり、2015年4月現在、日本国内には約20の道場があります。
各地域の道場は独立しており、道場ごとにやり方が違います。
CoderDojo(英語)
https://coderdojo.com/
全世界のCoderDojoのリスト
https://zen.coderdojo.com/
CoderDojo Japan
http://coderdojo.jp/
2.CoderDojoは、どんなことをしているの?
CoderDojo西宮/梅田を例に、CoderDojoの活動の様子を紹介します。
CoderDojo西宮/梅田では、西宮と梅田でそれぞれ毎月1回、7~17歳の子どもを対象にプログラミングやコーディングを教えています。
主な活動内容
1. scratch(スクラッチ)を使ってゲームを作りながら、プログラミングの概念を学ぶ
2. WEBサイト・WEBアプリ作成を通して、HTML、CSS、JavaScriptなどを学ぶ
3. Arduino(アルドゥイーノ)という小さな基板を使ってプログラミング制御を学ぶ
CoderDojoはカリキュラムがない
CoderDojoには、カリキュラムもテキストもなく、セミナー形式の授業もありません。
初めてプログラミングに触れる子どもは、まずscratchの使い方を学びます。
scratchとは、ビジュアルプログラミング言語の一種です。scratchを使えば、キーボードに慣れていなくても、視覚的にプログラミングの基礎を学ぶことができます。
●scratchを使ってゲームを作る
子どもたちは、scratchでゲームを作りながらプログラミングの基礎を学びます。
CoderDojoの特長は、大人が「これを作りましょう」と課題を与えるのではなく、子どもが「これ作りたい」と思うものを自由な発想で作っていくことです。
1日で完成しなくても大丈夫。CoderDojoは毎月1回開かれるので、家でやってわからなかったことは、次回のCoderDojoで教えてもらいます。
●質問すればメンターが教えてくれる
scratchでゲーム作りに没頭する子もいれば、WEBアプリを作る子、Arduino(アルドゥイーノ)という小さな基板にプログラムを組み込んで機械を動かしてみる子もいます。
●Arduino(アルドゥイーノ)にプログラミングを組み込む
みんなが一斉に同じ作業をするのではなく、それぞれがやりたいことを実現していくので自分のペースで進めることができます。
●発表タイムもあります
子どもだけでなく、メンターもscratchでゲームを作ってきたりします。
子どもたち同士で刺激を受け合うのはもちろん、メンターたちも遊ぶように教えることを心から楽しんでいます。
3.CoderDojo西宮/梅田の運営者に話を聞いてみた
●CoderDojo西宮/梅田を運営する細谷崇さん
CoderDojo西宮/梅田の運営者、細谷崇さんにCoderDojoの魅力を伺ってみました!
3-1.CoderDojo運営を始めたきっかけ
―CoderDojo運営を始めたきっかけは?
東京で開催されていたITセミナーへ参加した翌日に、東京のコワーキングスペース(共有オフィス)に立ち寄ったのですが、そこでたまたまCoderDojoが開催されてて。
たまたま同じITセミナーに参加していた和歌山在住の友人も、そのコワーキングスペースに居合わせていたので、「関西でもCoderDojoやりたいね」という話になりました。
CoderDojoはアイルランドに本部があって、そこに「CoderDojoやりたいです」と申請してOKをもらったら始められるんですが、CoderDojoの絶対ルールの一つに「参加費をとらない」というのがあります。
私自身、非営利で社会貢献がしたいと思っていたので、CoderDojoの目指すものと自分の考えが同じだなと思い、この活動を広めていきたいと思いました。
―「CoderDojoを始めたいな」と思ったとき、手伝ってくれる人や参加者はすぐに集まったんですか?
始めたのは、2012年12月です。第1回目は、私の周りにいるIT好きの友人たちに声を掛けました。大人に声を掛けたら、自分の子どもを連れて来てくれました。物珍しさも手伝って、第1回目の子どもの参加者は15~20人くらいだったかな。
でも、第3回目くらいから、だんだん参加者が減りました。毎月子どもを連れて来るのは大変だし、物珍しさで来ていた人は来なくなりました。
第3回目から第5回目くらいまで、私と私の息子だけの時が続きました。
第6回目頃からだんだんと、中学校でプログラミングが必修になったことや、子どもにプログラミングを教えることがメディアで紹介され始めて、CoderDojoの参加者が増え始めました。
3-2.やりたいことがあるなら、0人参加でも継続すること
―思うように参加者が集まらない時もあったんですね。
参加者が集まらず、私と私の息子だけの時を経験して感じたのは、「やりたいことがあるなら、0人参加でも継続すること」。継続していれば、いずれ人は集まってきます。
何か活動するときに、「参加者0人だと嫌だから、なかなか1歩を踏み出せない」ではなくて、「とりあえず0人でもやり続ける」というのは大事かなと。
―メンターはボランティアですよね。
CoderDojoは完全非営利のボランティアで、メンターには交通費も出ません。しかも2時間半がっつり時間を拘束されます。なのに、協力してくれる人が意外とたくさんいます。
最近、参加者が増えてきて、運営の裏方の作業が大変になってきたので「手伝ってほしい」と声を掛けたら「協力するよ」と言ってくれた人が10人くらいいて。
CoderDojoの活動を理解して、協力してくれる人がいることが嬉しいです。
―活動に協力的な人が結構いるんですね。
募金をしてくれる人も結構います。
非営利でやっていますが、会場費だけはどうしてもかかってしまうので、毎回CoderDojoの会場に募金箱を設置しています。すると予想していたよりも募金してくれる人が多いんです。
意外と募金だけでも会場費がまかなえています。
なにより、「応援してくれる人がいる」というだけで本当にありがたい気持ちです。
3-3.CoderDojoと、プログラミング教室の違い
―CoderDojoの1番の魅力は何だと思いますか?
塾みたいにセミナー形式の授業をしていないことです。セミナー形式だと、先生対子どもは、1対多数ですよね。CoderDojoでは、メンターと子どもが多数対多数です。
カリキュラムが無いので、子どもに課題を押し付けることはない。子どもが作りたいものを自分のペースで作る。それが他の習い事と大きく違うところです。
CoderDojoでは、毎回発表の時間があります。Dojoの時間内に出来上がってなくてもいい。今日までで出来たものを発表して、自慢し合える時間があるのもいいところです。
―子供たちの中には、自分で「これが作りたい」と決められない子もいるんじゃないかと思いますが…。
課題を与えたらきちんとできるけど、自分でやりたいことを決められない子もいます。
「何を作りたい?」と聞いても反応が無い子には、CoderDojoのやり方は合わないかもしれません。
基本的にメンターは質問に答えるだけで、質問のない子は放置です。(こんなの作ってみる? と提案くらいはします)
自分でやりたいことを決められない子は、ボーっと時間を過ごしている場合もあります。
●プログラミング仕様書を書いて来る子も
―なるほど。子どもの自主性を尊重しているんですね。では、CoderDojoをしている中で、印象的だった事件はありますか?
事件ではないですが、印象的だったことはあります。
いじめが原因で不登校になっていた小学生の子のことです。パソコンが好きで、タイピングも早く、頭のいい子だったので、CoderDojoではみんなから「すごい!」と尊敬されていました。それが自信に繋がったみたいで、翌年からは学校に通い始めたそうです。
親御さんからお礼のメールをもらった時は、嬉しかったですね。
―CoderDojoをやっていて、1番テンションが上がるのはどんな時ですか?
CoderDojoに、たまにとんでもなくセンスのいい子が現れることがあります。大人の発想を超えている、スーパーキッズです。
彼らは、すごいひらめきがあって、まさかと思うことをやってしまう。メンターの私たちが「逆にそれどうやってんの? 教えて?」みたいな。
子どもたちは、継続して来る子もいれば、その日だけ参加の子もいます。たまに、スーパーキッズに巡り合うと、メンターはみんな嬉しくてニヤニヤしています。
継続して教えている子が、ある日開花する場合もあります。
みんないずれそういう風に育ってほしいという想いもあります。
メンターはスーパーキッズに出会いたくて教えている、みたいなところがあると思います。
―そういう子の将来が楽しみですね。
そうですね。スーパーキッズに継続して来てもらえるように、メンターもレベルアップしないといけないですよね。子どもの方がレベルが高いようだと、来てもらえませんから。
3-4.子どもたちが気軽に近くのDojoに行けるように
―今後、CoderDojoを通じて、どんな風になっていきたいですか? どんな未来を思い描いていますか?
子どもたちが将来エンジニアになって、日本のIT技術の底上げをしてくれたら、というのは前提にあります。しかし、それは誰しもが思うことで、有料で子供たちにパソコン教室を開いている人も同じ考えだと思います。
CoderDojoは無料です。だから、ふらっと公園に行くように参加できるCoderDojoがたくさんできると良いなと思います。
でも、それには場所代がかかる。メンターを集めないといけない。
私がCoderDojo西宮/梅田で、どうすれば運営がうまくいくか四苦八苦している経験を活かして、運営ノウハウを整備し、CoderDojoを開きやすい環境を作りたいです。
私自身も、ふらっとメンターで参加できたりとか、子どもたちが気軽に近くのDojoに行けるように、土壌をつくりたい。
子どもたちが気軽にITを学べる環境を作って行けたらいいなと思います。
―CoderDojoが増えて来ているそうですね。
近畿圏には、計6か所のCoderDojoがあります。(開設順)
CoderDojo熊野
CoderDojo西宮
CoderDojo梅田
CoderDojo奈良
CoderDojo姫路(本部に未申請)
CoderDojo長岡京
最初に和歌山の友人がCoderDojo串本(現在の熊野)を始めました。その次に私がCoderDojo西宮とCoderDojo梅田を開設しました。
奈良と京都の運営者は、CoderDojo梅田でメンターとして参加した後、「こういう感じだったらできそう」ということで、地元で始めました。
CoderDojo梅田は立地的にアクセスしやすいため、CoderDojoに興味を持ってくれた人が遠方からでも様子を見に来やすいようです。
結果、梅田でメンターを経験して、地元でCoderDojoを開いてみようと考えてくれる人が増えました。
CoderDojoに注目してくれる人が増えるにつれて、メンターの数は増えてきています。
3-5.メンターが足りない
―CoderDojoが増えているにもかかわらず、子どものキャンセル待ちが出ているそうですね。
メンターの数よりも子どもの数が急速に増えていて、メンターが足りない状態です。
メンター1人あたり、子ども3人くらいが限度です。メンターが足りない場合、子どもはキャンセル待ちになってしまいます。
―メンターになってみたい人へ、メッセージがあればお願いします。
現在エンジニアとして活躍している方にも、初めてプログラミングに触れた瞬間があるはずです。
今は有料の教室やCoderDojoがありますが、昔はプログラミングを教えてくれるような場所はなかった。詳しい子に教えてもらったり、近所のお兄ちゃんがパソコン買ったから触らしてもらったりとか。私と同世代のエンジニアって、そういうパターンが多いと思う。
その時を思い出して、自分が次にバトンを渡すような気持ちでメンターとして参加してくれたらうれしいです。
こうするべきとか、押し付ける気持ちはありません。あくまで一つの方法として、CoderDojoをうまく使ってもらえたらいいな、と思います。
メンターはボランティアなので、自分が楽しめるような関わり方をしてほしいです。
無理に難しいことを教えようとするんじゃなくて、自分のやってる仕事・趣味の知識の一部でいいので、子供に伝えていってほしいなと。
メンターは多ければ多いほど助かるので、たくさんの人に来てほしいです。
―細谷さん、ありがとうございました。新しくCoderDojoを開いてみたい、メンターになってみたいという方が増えると良いですね。
細谷さんのお話を伺って、メンターは完全にボランティアですが、お金以外の報酬がたくさんあるから、この活動が人気になっているのかな、と思いました。
メンターが増えて、子どものキャンセル待ちが無くなるといいですね。
ちなみに、CoderDojo西宮/梅田では、メンターやサポートしてくれる個人・企業さまを募集しています。
メンターをやってみたい
CoderDojo西宮/梅田では、メンターを募集しています。
お問合せはこちら:http://coderdojo-nishinomiya.info/mentor
会場・備品の貸出し、募金などサポート
CoderDojo西宮/梅田の活動をサポートしてくれる個人・企業さまを募集しています。
お問合せはこちら:http://coderdojo-nishinomiya.info/support
参加してみたい人はこちら
CoderDojo西宮/梅田に参加してみたい方は、下記URLより予約状況をご確認ください。
参加方法はこちら:http://coderdojo-nishinomiya.info/join
4.最後に
細谷さんの話を聞きながら、最初にアイルランドで「CoderDojo」と名付けた人に思いをはせました。ネーミングセンス良過ぎるだろ、と。
日本には「武士道」とか「空手道」とか「茶道」とか、○○道という言葉があります。それぞれ、その物事を通して技術を磨くだけではなく、「道」、つまり生き方や世界の成り立ちなどの哲学を知っていくことを指します。
CoderDojoもプログラミングを通して、プログラミングだけじゃなく「道」を探究する場所なんじゃないかな、と思いました。
興味を持たれた方は、一度CoderDojoに足を運んでみてください。