バケモノスタッフブログ

ヨシダ
2015年08月27日
アート カルチャー

商店街に溶け込むアート「小松商店街 ART PROJECT-アートによる日常への接近ー」に行ってみた!

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こんにちは。さり気にバケモノスタッフで唯一大阪出身のヨシダです。
大阪といえば、太陽の塔が有名です。すなわち、大阪は現代アートと縁の深い街、と言えるかもしれません。(こじつけ)

というわけで、今回は、大阪市東淀川区上新庄にある小松商店街で行われた、アートイベントに行ってみました。

実は昨年このアートイベント発起人の一人であるアーティスト・田森葉一さんと知り合いになり、「大阪でイベントやるので、よかったら来てください~」とお声掛けいただきました。

商店街と、現代アート・・・?
しかも大阪の数ある商店街の中から、なぜ、小松商店街?

百聞は一見にしかず、と言います。面白そうなので、遊びにいってみました!

【イベント概要】

「小松商店街 ART PROJECT-アートによる日常への接近ー」

東京にて制作活動を行う側ら東京半蔵門「みんなのギャラリー」にてディレクターを務めるアーティスト田森葉一氏が、大阪市東淀川区上新庄にある「小松商店街」にて、アートイベントを開催。
■期間
公開制作期間:2015年8月11日(火)~8月12日(水)
会期:2015年8月12日(水)~8月22日(土)
■開催場所
小松商店街
大阪府大阪市淀川区小松1丁目
■主催
小松商店街
https://ja-jp.facebook.com/komatsu2013

「小松商店街 ART PROJECT-アートによる日常への接近ー」のようす

イベントは、8月11日からアート作品の公開制作という形で幕開けしました。
アーティスト2名がおもむろに、商店街のシャッター・壁面にアートを描いていきます。

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マスキングテープを使った作品を制作中のアーティスト・田森葉一さん

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シャッターにステンシル・ペイントを施す、アーティスト・松下徹さん

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診療所の壁面には、マスキングテープのアート。

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ドライクリーニング店の庇にも、マスキングテープのアート。

8月11日から12日の2日間にわたって、商店街のあちこちにアート作品が生まれていきました。
商店街に溶け込むアート作品は、注意深く見ないと見落としそうなところにもあります。間違い探しのようで、なんだかおもしろい!

なぜ、小松商店街で現代アート?

正直言って、小松商店街は大阪市の外れ、めちゃくちゃ下町です。
なぜ、この小松商店街で現代アートのイベントを開催することになったのでしょうか?

アーティスト田森葉一さんと松下徹さん、そして小松商店街の尼崎さんにお話を伺いました。

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左:小松商店街 HAIR SALON AMASAKI 尼崎靖士さん
中央:アーティスト 松下徹さん
右:アーティスト 田森葉一さん

―どんなきっかけで、このイベントを開催することになったんですか?

田森さん(以下、「田森」):昨年、小松商店街の近くにあるアートスペースmiyuにて、『日用品の行方 ―段ボール編―』という展覧会をしました。その時に、地域の人たちと出会い、もっと小松商店街やこの地域に暮らす人々との結びつきを意識し、日常に入り込んだ展示がしたいと思いました。

アートの役割は、いろんな方向性があります。アートがいろんなところに作用するのを見てみたかったんです。

―それで、田森さんから商店街の方にイベントを提案したんですか?

田森:そうです。商店街の街並みにアートが介入できないかと思って提案させてもらって。商店街の方々は「いつでも、どんなものでも、大丈夫ですよ」と二つ返事で受入れてくださいました。
その後も、商店街の方がいろいろ気にかけて下さったので、すごくスムーズに進みました。

尼崎さん(以下、「尼崎」):商店街でも、以前から「商店街とアート」というテーマは考えていました。
街路灯などに、何か描いてもらったらいいんじゃないかと。
親子やアーティスト、学生など、いろんな人に描いてもらえば、商店街を通る人も楽しいし、描く人も楽しいだろうなと思っていました。

今回、たまたま田森さんからこういう提案をいただいたので、「好きにやってください」と返事しました。

―商店街側でもアートイベントをしたいと思っていたんですね。すごくタイミングよく、需給が合った、と。

田森:そうですね。

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―やってみて、どうでしたか?

松下さん(以下、「松下」):大阪に来たのは初めてだったので、面白かったです。
制作作業をしていると、「何やってるんだろう?」と興味を持って話しかけてくれる人が多くて。

作業をしていて、「ちょっとここ持っててほしいなー」と思えばその辺に誰かいて、手伝ってくれて。こんなにやりやすい作業環境は、そうそうないです。ほんとに楽しかったです。

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―制作しているのはアーティストの2人だけど、街の人みんなで作っているような、不思議な感じですね

尼崎:普通こういうイベントって、助成金などのことを考慮して、枠組みから考えていくんです。
要するに、収益を考えたり、依頼する側と依頼される側が生まれたり。そうなってくると、損得勘定や利害関係が生まれて、反対する人が出てくる。

それって、絶対しんどいと思うんですよ。
ストレス感じながらやっていて、楽しいわけがない。

だから僕らは、自分たちが楽しんでできることをやっていきたいんです。
みんなが楽しくて、商店街を通る人も楽しくて、だれも無理してない、それが一番いいと思うんです。

松下:今回のイベントをやっていて、「こんな風にしてください」などの要望は一切ありませんでした。
そのかわり、商店街を通る人たちが、「何やってるの?」と話しかけてくれたり、「暑いやろー?」と飲み物をくれたり、「面白いことしてるなあ」と足を止めて見てくれたり。会話しているうちに「ここの壁も使っていいよ」とか、実際に行動してイベントに参加しているんです。

そういう環境でやったのは初めてだったので、最初はどうなるんだろうとわからずに来たんですが、楽しかったです。

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―なるほど。田森さんの言う「地域に暮らす人々との結びつきを意識し、日常に入り込んだ展示」、その言葉のとおり実現したイベントですね。

尼崎:実は、商店街は街にとってすごく重要なコミュニティです。例えば、震災などの災害の時、復興は商店街からスタートします。

大手スーパーは、周りに人がいないと開店しません。
でも商店街は、人が住んでいるので、自分たちのことをすると自然といろんなことが動き出します。
なので、復興時はすべて商店街を核としていろんなことが波及して動いていくんです。

だから、コミュニティの核として商店街は必要です。
現状を放置するのではなく、新しい出会いの可能性を込めて、何かやりましょう、と。
何かして、自分たちが楽しかったら一番いいじゃないですか。

難しいことは何も考えてないです。
みんなで汗かいて、楽しかったらいい。

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―今後も、継続的にやっていく予定ですか?

田森:発展的に広がってほしいです。
僕らのような、他所の土地から来た人間が、その地域の日常に入り込むことでどんな化学反応が起こるのかが重要だと思っています。小松商店街はその化学反応が起こりやすい土壌だと思いました。

尼崎:ここは、相当いろんな人の意見を聞きながらライブで制作できますからね。
また半年後、一年後に田森さんたちが来てくれたら、商店街の人たちは「今度は何やるの?」と興味を持って話しかけると思います。
またいろいろ一緒にやりましょう。

インタビューを終えて

インタビュー中も、通りすがりの人たちがアーティストの2人に、「これ何やってるんですか?」「商店街のFacebookで見ました!頑張ってください!」「普段はどんな作品を作ってるんですか?」など、思い思いに話しかけていました。
大人も子どもも、いつもと少しだけ違う表情の風景に、わくわくしている様子。
とても素直なリアクションで、気さくな街だなーという印象をうけました。

「商店街活性化のためのイベント」というと、どうしても収益性や費用対効果など小難しい話が出てきがちですが、小松商店街はそういうやり方をしていないのが面白いところです。
小松商店街では、他にも『七夕・たんざく大作戦』や『打ち水大作戦』など、街の人が参加しながら、誰も無理せず、みんなが楽しい取組みをしています。
もともとそういう土壌があったからこそ、他所から来たアーティストをすんなり受け入れることができたのかな、と思います。

ちなみに、マスキングテープの作品は8月22日(土)に撤去しましたが、ステンシルアートはそのまま残るので、いつでもご覧いただけるそうです。

上新庄・小松商店街周辺 は、本当にいいところだなあ!

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