バケモノスタッフブログ

ヨシダ
2015年05月21日
カルチャー 知識

意外と知らない 和柄の名称【動物の模様編】

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こんにちは。世界一周旅行をした結果、日本が一番と確信したヨシダです。

今回は、「意外と知らない 和柄の名称【動物の模様編】」です。
和柄には動物がモチーフになったものがたくさんあります。動物に「神の使い」とか「いい知らせをもたらす」などの意味を持たせたり、季節感を出すために使ったり、様々な効果を狙ったようです。

今回は動物が描かれている和柄の中から、メジャーな文様の名前を11個紹介します。

1.千鳥(ちどり)

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千鳥は鳥の種類ではなく、水辺に集まるチドリ科の鳥の総称です。くちばしが短く、小さく可愛らしい鳥です。水辺にいるため、水の文様や水辺の植物の文様と組み合わせて描かれることがあります。
写実的に描かれることもありますが、多くの場合は可愛らしく意匠化された千鳥が用いられます。
図案化しやすい形なので、千鳥格子や千鳥卍といった文様は、広く愛されています。

千鳥格子(ちどりごうし)

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なんだか洋柄みたいですが、和柄の一種です。
「千鳥」とつきますが、もう千鳥の面影がほぼありません。
千鳥格子は年齢・季節を問わず、広く愛されているので、どこかで目にしたことがあるのではないでしょうか?

千鳥卍(ちどりまんじ)

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千鳥を図案化して、卍の字に似せた文様です。
エッシャーのだまし絵のようで面白いですね。

2.雁(かり)

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雁は、カモ科の水鳥の総称で、秋に飛来し春に北へ帰る渡り鳥です。家禽はガチョウと呼ばれます。
雁を意匠化した文様には、鍵型に隊列を組んで飛ぶ姿を文様にした「雁行文(がんこうもん)」や、雁の姿を意匠化した「結び雁金」などがあります。
上の図案は「結び雁金」です。大胆なデザインですよね。
雁は鳴き声に独特の哀愁があることから、「よい知らせをもたらす鳥」とされています。

3.鶴(つる)

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鶴は平安時代から、長寿を表す吉祥の鳥とされてきました。なぜ鶴が長寿を表すのでしょうか? 鳥の中では比較的長生きだから、鳴き声が遠方まで届くので天上界に通ずる鳥と考えられていたから、など諸説あります。
鶴のように真っ白な白髪を「鶴髪(かくはつ)」と言うように、白い羽毛が長寿を連想させるのかもしれません。
長い首と脚が特徴的で、優雅に飛ぶ姿は人々の心をとらえ、数多くのデザインが生み出されてきました。

4.蝙蝠(こうもり)

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黄昏の時刻に現れる蝙蝠。現代では西洋文化の影響を受け、吸血鬼の眷属というイメージがあります。天使の羽は白い鳥の翼であるのに対し、悪魔の羽は蝙蝠の翼が描かれていることからも、「蝙蝠=悪者」というネガティブなイメージがあるのではないでしょうか?

しかし、中国では、蝙蝠の「蝠」の字は「福」と同じ発音のため、蝙蝠は「福」を表します。百年生きたネズミが蝙蝠になるという伝承から、長寿のシンボルでもあります。
西洋文化の影響を受ける前の日本では、中国の影響を受け、蝙蝠は縁起の良い動物とされていました。
特に蝙蝠を5匹描いた文様は「五福」と呼ばれ、長寿・富・健康・子孫・繁栄を表します。

5.鹿の子(かのこ)

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鹿の背中の斑点に似ていることから、鹿の子と呼ばれている文様です。
絞り染めの一種「鹿の子絞り」は、奈良時代に始まり、江戸時代に発展しました。現代では、非常に手間のかかる染め技法であることから、高級和装として用いられています。
鹿は神の使いとされており、鹿の角を意匠化した文様などもあります。

6.亀(かめ)

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亀は鶴と同様に長寿を象徴する吉祥文様とされています。
中国では、古代中国神話に出てくる四霊の一つ「霊亀(れいき)」の甲羅に蓬莱山があり、不老不死の仙人が住むと言われています。
日本では尻尾のような藻が付着した「蓑亀(みのがめ)」が描かれることが多く、「藻が長い=長寿の亀」と考えられたようです。

7.蜻蛉(とんぼ)

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古くは蜻蛉のことを「蜻蛉(あきづ)」と呼びました。
古代日本では本州を、「秋津島(あきつしま)」と呼びましたが、これは日本神話で神武天皇が「この島は蜻蛉の形のようだ」と言ったことが由来とされています。
蜻蛉は、素早く攻撃的で、空中を飛び回って虫をとらえるため、「勝虫」「勝軍虫」とも呼ばれ、武人に好まれました。

8.蝶(ちょう)

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蝶の文様は中国から伝わり、鎌倉時代には盛んに用いられるようになりました。
「蝶紋と言えば平家」と連想される方も多いかもしれません。戦国武将織田信長は、自らを平氏の子孫と称し、蝶紋を用いました。
ちなみに蝶文様では「揚羽蝶」の文様が有名ですが、「揚羽蝶」は、アゲハチョウのことではなく、羽を上げて休んでいる蝶の姿を指します。
デザインのバリエーションが多く、植物などの文様と組み合わせて使われることも多くあります。

9.貝(かい)

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貝は形の面白さから、そのままの形を写実的に描かれることが多いようです。平安時代に「貝合わせ」という遊びが流行ったため、貝合わせの絵柄が多くみられます。
海浜風景を表すアイテムとしても用いられ、波やカニの文様と組み合わせて使われることも。

最後に

さて、ここに挙げた動物たちには共通点があります。
そう、みんな「小さくてかわいい系」の動物です。
もちろん和柄の中に、獅子や龍などの「かっこいい系」の動物が描かれることもあります。
しかし「かっこいい系」は写実的に描かれることが多く、比較的「小さくてかわいい系」の方が図案化しやすかったのでしょう。
特に千鳥なんかは、もはやその翼では飛べないだろうと思うほど、小さく可愛らしくデフォルメされています。

動物の文様は、植物や自然現象などの文様と組合わせて用いられることが多いですが、単独でも十分に可愛らしい文様です。

次回は植物をモチーフにした文様を紹介します。

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