バケモノスタッフブログ

ヨシダ
2015年04月16日
カルチャー 知識

意外と知らない 和柄の名称【自然現象の模様編】

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こんにちは。
バケモノ株式会社で最もしょうゆ顔のヨシダです。薄くて何が悪い。

今回は、「意外と知らない 和柄の名称【幾何学模様編】」の続きで、「意外と知らない 和柄の名称【自然現象の模様編】」です。

自然現象は、長い歴史の中でさんざん意匠化されてきました。そのため種類も豊富です。意匠化されすぎて若干原型をとどめていないものもあります。
意外と、「見たことあるけど、これが●●とは思わなかった」みたいな柄があるのではないでしょうか。

そんな自然現象の和柄の中から、11種類を紹介します。

1. 雲(くも)

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雲の文様は歴史が古く、奈良時代から用いられてきました。絵巻などにもよく描かれています。雲の形が多様なように、文様もバリエーションが多く、横一文字の「一文字雲」、雲を呼ぶ竜を組み合わせた「龍雲文」のほか、「渦巻雲」「枯木雲」などがあります。

鶴など、空を飛ぶ動物を組み合わせたデザインも多くみられます。

2. 霞(かすみ)

SHAPE PATTERNS _1

霧(きり)や靄(もや)など水蒸気によって遠景がぼやける現象を総じて霞(かすみ)といいます。朝や夕方に雲よりも低い位置でたなびく霞は、なんとも幽玄な雰囲気を醸し出します。
雲と同様に、古くから絵巻物や屏風などで度々描かれてきました。文様のバリエーションが多く、フラットなデザインから、刷毛でかすれさせたような奥行のあるデザインまであります。

3. 雷(かみなり)

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現代で「雷」と言えばジグザグの稲妻を思い浮かべますが、伝統的な雷文様はこの四角い渦巻きです。これのどこがどう雷なのかはわかりませんが、中国では殷・周の時代から用いられており、日本は奈良時代に伝来しました。
雷文は万物を潤す雷雨を意味するため不断長久を表す吉祥文様です。

4.雪(ゆき)

雪華文様(せっかもんよう)

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雪の結晶をデザイン化した文様です。雪の結晶の研究を行い「雪の殿様」の異名で知られる古河藩主土井利位が、さまざまな雪の結晶図を描いた「雪華図説」を出版したことをきっかけに、江戸庶民の間で雪華文様が流行しました。
六つの花びらのように見えることから「六つの花(むつのはな)」と呼ばれることもあります。

雪輪(ゆきわ)

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円形に6〜8のくぼみをつけた独特の形を雪輪(ゆきわ)と言います。雪輪のみを配すこともありますが、輪の中に他の文様を配して用いる場合もあります。
雪輪文様は冬に限らず年中使われます。雪解け水が野山の植物を育むことから、雪輪は吉祥文様とされています。

5.氷(こおり)

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氷をモチーフにした文様では、ひび割れた氷を意匠化した「氷割文様(ひわれもんよう)」が有名です。上の図案は氷割文様に星花を配した文様です。
氷割文様は単に冬の寒さを表現しているわけではありません。固く凍っていた氷がひび割れる様子は、春を予感させます。氷割文様に梅の花を組み合わせると、2月頃のまだまだ寒いけれど梅が咲いて着実に春に近づいている景色が思い起こされます。

6.雨(あめ)

SHAPE PATTERNS _1

細い線で表現される雨の文様です。日本では雨の様子から季節感・時間帯などを読み取ることができます。また、風、空気の匂い、景色の奥行など多くの情報を表すことができるモチーフです。
浮世絵でも、歌川広重の「大はしあたけの夕立」をはじめ、雨の景色が頻繁に描かれています。

7.水(みず)

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川や池の水を意匠化した文様で、平行線の端をSの字でつないだ「流水文(りゅうすいもん)」が特に有名です。流水文は弥生時代の銅鐸にもみられる文様です。
水文は、他の文様と組合わせることが多く、組合せのバリエーションも豊富です。上の図案は流水文と千鳥を組合わせた文様です。
水はその流れの速さ、水量などで表情が全く異なるため、流水文以外にも「荒磯波」「さざ波」「青海波」など数多くのデザインがあります。

観世水文(かんぜみずもん)

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能楽で知られる観世家が観世太夫の定式文様として使用した渦を巻く水の文様が「観世水文(かんぜみずもん)」です。
能装束のほか、着物、扇、本の表紙など多くの品に用いられている柄です。
水なので青系の色で描かれることが多いですが、単純化されているため様々なカラーバリエーションでも用いられます。

8.波(なみ)

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寄せては返す波の姿を瞬間的にとらえ、意匠化したものが波文様です。漁師が無事を祈願するために用いられるほか、海の神を祀る神社のシンボルとして祭事の衣装などに用いられます。
波と魚、波と鶴など、波を地紋にして他のモチーフと組み合わせることもあります。

青海波文(せいがいはもん)

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円弧を規則的に配して波を表現した文様です。能楽「青海波」を演じるときの衣装にこの文様を用いたことから「青海波文(せいがいはもん)」と呼ばれるようになりました。
海からもたらされる幸を連想することから、吉祥文とされています。
波文様は青系の色で描かれることが多い中、青海波文は単純化されたデザインなので多彩なカラーバリエーションで表現されます。
魚や鳥などの文様と組み合わせて使われることも多く、遊びやすい文様です。

最後に

見たことのある柄はありましたか?
私は、雷と雪輪の意匠が驚きでした。現代でイメージする模様と若干かけ離れていませんか?

自然現象の和柄は、風流な演出に使いやすいです。波+えび、雲+千鳥 など、ただの文様の組み合わせなのに、景色を生み出しているところが、 いかにも日本の美意識という感じがします。

ちなみにコンビニのおにぎりの包み紙には、青海波文などの和柄が良く使われています。
「海苔が特別だから、波の文様」など、商品のウリと関連させた和柄が使われていたりするので、着眼してみると面白いかもしれません。

今回は、自然現象の和柄を取上げましたが、動植物や日用品をモチーフにした文様もたくさんあります。徐々に紹介していきますので、お楽しみに。

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