バケモノスタッフブログ

ヨシダ
2015年04月09日
知的財産 知識

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの問題点

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こんにちは。バケモノの自称・知財担当ヨシダです。

前回、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)の利点を中心に書いてきました。しかしCCライセンスには問題点もあります。
今回は、CCライセンスの問題点を中心に書いていきます。ここに挙げるのはそのごく一部ですが、特に問題となる部分です。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの問題点

1.営利目的・非営利目的とは何を指すか?

社内プレゼン資料に使用するのは「営利目的」でしょうか?保育園のバザーのチラシは?
個人ブログでも広告収入のために運営していれば「営利目的」?
営利目的・非営利目的の境界がどこにあるのか、クリエイティブ・コモンズは定義していません。その代わりに下のような見解を示しています。

営利なのか、非営利なのか迷ってしまうような場合は、明らかに営利利用が許諾されているライセンスのついた作品(例えばBY(表示)、BY-SA(表示-継承)、BY-ND(表示-改変禁止) などが付いた作品)を利用することをおすすめします。
引用元:http://creativecommons.jp/faq

つまり、CCライセンスでは営利・非営利の境界があいまいなので、「判断に迷うなら営利目的可のものを使え」ということです。

もちろん、CCライセンスで「非営利」の設定になっていても、著作者に連絡をとり営利目的使用の許諾をとれば営利目的で使用できます。ただ、CCライセンスの利点は、CCライセンスの著作物を条件さえ守れば著作者に連絡をとらずに自由に使えること。その条件の部分が曖昧というのは問題です。

CCライセンスの運用は完全に利用者のモラルや善意に頼っている側面があり、著作者の詳細な意思が反映しにくい作りになっています。

2.改変禁止の「改変」とは何か?

画像のサイズを変えるのは「改変」でしょうか?画像の周囲を白く囲むのは?
何をもって「改変」とするかを、クリエイティブ・コモンズは定義していません。
著作者は「意に反する改変を受けない権利」があり、何が「意に反する改変」にあたるかは著作者次第です。極端な話、著作権者が「リサイズは意に反する改変だ」と感じれば、リサイズもダメな可能性があります。
「改変」に関しても、「営利・非営利」と同様に、条件が曖昧で問題と言えます。

3.作品の使用方法を限定できない

通常、日本のフリー素材サイトの利用規約には、「公序良俗に反する内容での利用を禁じます」など、禁止事項があります。
CCライセンスの場合、そのような禁止事項が設定されていないので、思いもよらない用途に利用されてしまう危険性があります。
もし著作者が、意にそぐわない利用方法だと思えば、その意思を伝えて使用を止めてもらうことはできます。しかし、CCライセンスの著作物は著作者に断りなく利用できるもの。著作者はどこで誰がどのような目的で利用したかを知り得ないのです。
CCライセンスは誰にでも使いやすい反面、細かい条件を排除したため、かえって曖昧な部分が多いのです。

4.肖像権、パブリシティ権に触れていない

例えば人物が写った画像であれば、著作権以外に、被写体の肖像権が絡んできます。また、有名人などの写真であればパブリシティ権という権利も絡んできます。
しかし、CCライセンスはあくまで著作権についてのライセンスなので、被写体の肖像権・パブリシティ権など、周辺の権利には全く触れていません。
本来、肖像権やパブリシティ権が関係する画像を使う場合、それぞれの権利者に使用許諾をとる必要がありますが、CCライセンスのユーザーには見落とされてしまう可能性が高いです。

5.他人の作品にCCライセンスを付与しているかもしれない

これはCCライセンスで最も問題視される部分です。
他人が自分の著作物に勝手にCCライセンスを付けてしまうことが考えられます。悪意を持ってやる場合もあれば、知らずにやってしまう場合もあるでしょう。
この問題に対し、クリエイティブ・コモンズは、以下のような見解を示しています。

誤った内容のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが付けられてしまっている作品がある可能性もあります。そのような作品を、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの表示を信じて利用してしまった場合、著作権侵害の責任を負わなければならない場合があります。
引用元:http://creativecommons.jp/faq

さらに、下のようにも書かれています。

クリエイティブ・コモンズは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスが誰にどのように使われているかを調査・管理しているわけではなく、個別の作品に付されたライセンスが正当な権利者によって正しい方法で付されたものかどうかを確認・検証することもありません。
引用元:http://creativecommons.jp/faq

つまり、CCライセンスが設定された著作物をCCライセンスに則って使用しても、本当の著作権者から損害賠償を請求される可能性があるということです。
CCライセンス自体、悪用する人の存在を考慮せずに作られています。そのため、トラブルを引き起こす要因が多く残されています。

じゃあ、どうすればいいの?

CCライセンスには、多くの問題点があります。では、どうすればいいのか?

現状、著作者ができることは、「CCライセンスを設定する場合は、悪意を持った人がモラルに反するような使い方をしても諦める」という覚悟をもって設定することです。

そして、利用者ができることは、「大事な資料や、企業のパンフレット・ウェブサイト等にはCCライセンスの著作物を使用しない」ということです。
「大事じゃない」「代わりの効く」場合のみCCライセンスの著作物を使えば、何かトラブルが起きたとしても、他の物に差し替えることで解決できます。

そして、多少面倒だとしても、大事な資料やパンフレット、ウェブサイト等には、きちんと著作者に許諾をとった著作物を掲載するべきです。

CCライセンスが解決しようとしている課題は、大変有意義なものです。ですが、現状のCCライセンスは著作者・利用者の両方を十分に保護できるものではありません。
このあたりのメリット・デメリットを承知したうえで、CCライセンスを上手に活用していくべきだと思います。

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