【南森町奇譚】栗の渋皮煮
それは10月のある日のことだった。
大阪にある小さなウェブ制作会社で働くヨシダは、大型サイトの納品が重なり、毎晩遅くまで残業する日が続いていた。
その日もパソコンに向かいながら、ヨシダはふと思った。
「前の職場でも、こんな風に残業してたっけ・・・」
それは今から10年前、ヨシダが就職戦線を勝ち残りやっとのことで入社した会社員1年目の秋のこと。
ヨシダはその頃、職場の同僚たちから悪質かつ陰湿ないじめを受けていた。たとえば、マリオに乗り捨てられるみじめな恐竜の名前で呼ばれたり、ひどいときには上司が沢田研二の「TOKIO」を歌う際の合いの手を「YOSHIO」にされた。ヨシダはこう思った。「目立たないように静かに生きていきたいのに、いじるなんてヒドイ!」
しかし、ヨシダはまだ入社1年目。こんなことで挫けてはいけないと耐えていたが、いよいよ我慢の限界が訪れた。入館証をうっかり家に忘れる呪いをかけられたのである。
「やばい、会社に入れない!どうしよう!」
その時、背後からヨシダに近づく人影があった。
「あれ、ヨッシー。こんなところでどうしたん?」
それは、同じ部署の先輩ピロ彦であった。
「入館証を家に忘れてしまって・・・」
「まじか、おっちょこちょいやな」
その時ヨシダは突然、堰を切ったように感情があふれ出してしまった。
「もう・・・、もう、私、限界なんです・・・!!!」
「ど、どうしたヨッシー」
「私、もう会社辞めたい!!」
「まじか。どんまい。」
そう言うとピロ彦はおもむろにポケットから栗の渋皮煮を取り出し、にっこり笑った。
「これ食べて、しっかり働こ」
ヨシダは何とかその後2年間その職場で頑張った。しかし結局辞めてしまった。
そして、毎年秋になると、あの時のことを思い出すのである。
ピロ彦と食べた、栗の渋皮煮のほろ苦く甘い味を。
栗の渋皮煮の材料
栗 18個
砂糖 300g
水 カップ4
栗の渋皮煮の作り方
① 栗を水につけて一晩おく
② 栗の鬼皮を剥く
③ 栗を15〜20分、ゆでる
●ゆであがり
④ 水にさらし、竹串を使って繊維状の筋や皮をきれいにとる
●きれいになった
⑤ もう一度ゆでる(3〜4分)。
⑥ そして繊維状の皮や筋を取る。
●もっときれいになった
⑦ もう一度ゆでる(3〜4分)。
⑧ そして繊維状の皮や筋を取る。
●またまたきれいになった
⑨ もう一度ゆでる(3〜4分)。
⑩ そして繊維状の皮や筋を取る。
●もっともきれいになった
こんな感じで、3~4回ゆでこぼす作業を繰り返します。
⑪ 鍋を洗い、栗と水と砂糖(150g)を鍋に入れキッチンペーパーで落し蓋をして中火にかけ、煮立ったら5〜6分で火を止める。そのまま冷ます。
●砂糖を半分に分ける。あと2回煮ます。
●砂糖を入れて落し蓋をして煮て、冷ます。
⑫ 弱火にかけ、砂糖(150g)を鍋に入れ、キッチンペーパーで落し蓋をして弱火で7〜8分煮る。火を止め、冷ます。
⑬ 出来上がり
ワンポイント
栗の渋皮煮は作るのが超面倒です!買った方が早いしおいしいし確実です!もうすぐお正月なので、お節料理に入ってる栗の甘露煮でも食べて満足しておけばいいと思います。
ちなみに冒頭の小話は全編フィクションですが、作り方は本当です!