徒然書評

『リカーシブル』:米澤 穂信

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Hello!徒然書評へようこそ。
書評ライターのTKです。

第12回目の寄稿となります。

最近、ピンズラーアメリカ英語という英会話レッスンに取り組み始めました。U-CANが行っている英会話レッスンで、日常的なフレーズを耳から覚えていこう、というものです。
1日30分のリスニング+発声練習なのでそれほど苦もなく取り組めるのですが、効果のほどは疑問です。

継続は力なり。
ということで、もう少し続けてみようと思います。

さて、前置きとはまったく関係のない今日の一冊をご紹介しましょう。

『リカーシブル』:米澤 穂信

リカーシブル
リカーシブル 著者:米澤穂信 出版社:新潮社

少し前に同著者の『氷菓』という作品がアニメ化されていました。また、短編集ではありますが最新作『満願』が、「ミステリが読みたい!」(早川書房)、「このミステリーがすごい!」(宝島社)、「週刊文春ミステリーベスト10」(文芸春秋)の国内部門でそれぞれ1位に輝いており、作家の名前は知っているよ、という方はそこそこいらっしゃるのではないかと思います。

米澤氏の作品は、日常の謎というジャンルを扱うことが多く、広義ではミステリー作家という評価を受けているようです。ですが、豊富な読書量に裏打ちされたその作風からは、ミステリーはもちろんのことSF・ファンタジー・ホラーといった要素を含んだ、オリジナリティ溢れる作品が多いのです。

本作も、中学生という世代を主人公に据えて、世代特有の悩みや苦悩を描くとともに、ミステリーやホラーテイストを含ませた魅力的な作品に仕上がっています。

少しだけあらすじを説明しますと、本作の主人公は中学一年生のハルカ。
父親と別れ、母と弟の3人で母の故郷へ引越ししてきた場面から物語は始まります。
昨今の青春小説に多いように、本作でも新しい学校でのいわゆるスクールカーストやヒエラルキーへの不安などが描かれ、閉塞感漂う重苦しい雰囲気が感じられます。

新しい街にきてから、弟が奇妙な能力を発揮するようになります。
「予知能力」です。
何かの思い違いだと思って少し調べ始めると、この土地には古くから「タマナヒメ」という予知能力をもった姫の伝承が残っていることを突き止めます。

何か関係があるのだろうかと、より調査を進めようとすると、調査の当事者たちはみな例外なく死亡していることが分かり、また、調査に協力してくれていた教師が事故に遭い入院したりと、何かきな臭いものを感じ始めるのです。

この街はおかしい。
違和感を覚えつつも、聡明なハルカは謎に立ち向かって行くのです。

終盤には、ちりばめられた謎は回収され、一件落着となるかと思いきや、新たな試練がハルカを襲ってくるわけですが、それは本作を読んでのお楽しみということで。

米澤氏の作品は、『氷菓』のような爽やかな青春ミステリものもありますし、本作や『ボトルネック』のような、どうにも一介の中学生や高校生が抗うことのできない絶望感のようなものを描いたものもあります。

どの作品にも強いメッセージ性があり、読後に「だから何?」で終わってしまうだけのものではないと、個人的には思っています。
愛してやまない作家であるだけにかなりの贔屓目になってしまいますが、近年最もノっている作家の一人であることは間違いありません。

そろそろ読書にも慣れたかなぁという方々、少し味わい深い米澤穂信の世界観を覗いてみてはいかがでしょうか。

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