徒然書評

『ゼロの迎撃』:安生 正

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こんにちは。徒然書評へようこそ。
書評ライターのTKです。

第7回目の寄稿となります。
結構書いてきたと自分では思っていましたが、まだ7回目なのですね。いっそう精進していきたいものです。

本日紹介しようと思っているのは、一般的に思い浮かべるようなミステリー作品ではありません。

『ゼロの迎撃』:安生 正

ゼロの迎撃 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
ゼロの迎撃 著者:安生正 出版社:宝島社

この作者は、『生存者ゼロ』というタイトルのパニックスリラー小説で「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞しています。
本作は、それに続く第2弾ということになりますね。

あえて大賞受賞作を薦めないのは、よりホットな情報をお届けするためです。というのは言い訳で、つい最近読んだので紹介文が書きやすかったからです。
とはいえ、どちらも甲乙つけがたいエンターテインメント性あふれる作品です。

本作の主人公は、ベテラン自衛官。
彼は、世界各地の様々な情報を集め、分析し、内閣総理大臣のブレーンとして決定者の判断を仰ぐ、そんな仕事を担っています。

転勤が決まり、ようやく緊張感このうえない職場から離れられると思った矢先に、とある隣国の不審な動きを察知し、きな臭い事件に巻き込まれてゆくのです。

隣国のテロリストたちは、日本政府の小回りの利かなさや、東京という都市の弱点を突いた戦術を用いて、少数精鋭で東京を襲撃するのです。

真面目な小説です。しかし、眉間にしわを寄せながらも、ページを繰る手が止まらない面白さがあります。

主人公の分析ミスのせいで、為すすべなく倒れてゆく自衛官たち。
ついには、自衛隊内で職務放棄の動きまで表れ始めますが、内閣総理大臣から自衛官たちへの「大切な者たちのために戦って欲しい」という心からのエールが、彼らの心を動かすことになるのです。

一番の見所であり、感動のシーンでした。

本作はありていにいえば戦争モノです。
しかし、昨今の集団的自衛権に関する問題や無差別テロなど、世界情勢を汲んだ(悪く言えばブームに乗った)世界観が描かれており、あり得ないと感じつつも、より身近に作品の世界を肌で感じ取れるのではないかと思います。

真面目に書いてきたので疲れ始めました。

今私たちが馬鹿笑いしながら、ビールを飲み、タバコをふかし、造幣局の桜を見ながらフランクフルトを頬張っていられるのも、本作の主人公のような人々が争いを未然に防いでくれているから、なのかもしれません。

デビュー作『生存者ゼロ』は、原因不明の感染症(?)により人々がどんどん死亡していくというパニックものです。こちらも日本政府の愚鈍な対応を痛烈に皮肉った社会派的な内容の小説になっています。

『日本はこのまま平和ボケしていて良いのか?』
作者から問われている気がします。

たまには真剣な小説を真剣に読んでみるのもいいですよ。
ぐっすり寝られる気がします。(注:個人の感想です。)

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