バケモノスタッフブログ

ヨシダ
2014年11月13日
知的財産 知識

漫画など、連載モノの著作物のコピーライト表示

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20141113_large

こんにちは。バケモノのヨシダです。
今回も引き続き、コピーライト表示に関する話です。

前回は、著作物のコピーライトを書くときの正しい書き方について調べました。
その結果、コピーライト表示に必要な要件は下の3つということがわかりました。

コピーライト表示に必要な要件
・©マーク
・最初の発行の年
・著作権者の名前

でも、ここで疑問が湧いてきました。
『漫画や小説など連載モノの著作物の「最初の発行の年」っていつになるの?』
第1話発表時でしょうか?それとも連載終了時?

そこで今回は、連載モノのコピーライト表示のルールについて調べてみました。

連載モノのコピーライト表示のルール

著作権法56条第1項には、

「冊、号又は回を追って公表する著作物については、毎冊、毎号又は毎回の公表の時によるものとし、一部分ずつを逐次公表して完成する著作物については、最終部分の公表の時によるものとする。」

と書かれています。

分かりやすく説明すると、「ゴルゴ13」のような1話完結ものは、その回ごとに公表したことになります。一方、「ONE PIECE」のような1話完結ではないものは、連載終了時に公表したことになります。

漫画のコピーライト表示を実際に見てみた

では実際に漫画の巻末にある奥付を確認してみます。
参考図書は「地獄先生ぬ~べ~NEO 1巻」と「銀の匙 12巻」です。

 20141113_01
●両方とも面白いです

2014年に出版された漫画です。2作品とも、1話完結ではありません。つまり著作権法上は、連載終了時に「最初の発行の年」が訪れるはずです。

まずは「地獄先生ぬ~べ~NEO 1巻」の奥付をチェックします。

 20141113_02
●「地獄先生ぬ~べ~NEO 1巻」の奥付

コピーライト表示は、「© Shou Makura 2014」「© Takeshi Okano 2014」と書かれています。
あれ?2014年?連載終了時が「最初の発行の年」のはずでは??

念のため、「銀の匙 12巻」も見てみます。

 20141113_03
●「銀の匙 12巻」の奥付

こちらのコピーライト表示も、「© Hiromu Arakawa 2014」です。「地獄先生ぬ~べ~NEO」も「銀の匙」も連載中なので、連載終了時が「最初の発行の年」になるというルールから外れた年号が記載されているように見えます。

この理由を調べてみました。

単行本発行時に著作権の契約をしている?

いろいろ調べてみたところ、「知恵の守護法」(著者: 浜田治雄,三恵社,2007)744ページに次のような記載がありました。

<3>コミック
コミックについては、近年、二次利用の増加、著作者及び出版社双方の契約意識の向上、著作権法改正による貸与権の新設等を背景に、出版契約の締結割合は高まっているといえる。ただし、出版社によっては、漫画家との専属契約を結ぶことにより個々の著作物についての出版契約書に代えているケースもある。
コミックは、雑誌に掲載された後に単行本化されるケースがほとんどであり、通常、週刊誌の3ヵ月分の連載で単行本1冊になる。少なくとも単行本化されてはじめて、キャラクター使用やアニメ化等の二次利用の可能性が出てくるため、契約は雑誌連載時ではなく単行本化の際に結ばれるケースが多い。契約の方式としては、単行本の全巻について包括的に行う方式と各巻ごとに行う方式とがある。
二次利用については、単行本化に際しての出版権設定契約では出版社に優先権を与える旨のみを定めておき、条件等の詳細は具体的な案件ごとに改めて協議するのが一般的である。

連載漫画の場合、アニメ化やキャラクター使用など二次利用の可能性が出てくるため、単行本出版のタイミングで著作権に関する契約を交わすらしい、ということがわかりました。

また、日本は著作権が自動的に発生する「無方式主義」を採用していますが、トラブルを回避するため文化庁に著作権を登録しておくことができます。書籍の著作権登録では「第一発行年月日等の登録」に「第一刷が発行された年月日」を登録します。

単行本そのものが1作品

実際問題、漫画の連載終了時が「最初の発行の年」になるとはいえ、単行本発行時に「最初の発行の年」を表示ができないのでは、かなり不都合です。
3年以上連載がストップした時は、最後の話を最終話とみなすというルールもあるので、実務上は連載終了時を「最初の発行の年」と扱うことが難しいと考えられます。

そこで、単行本そのものを1作品とみなし、作品本編が終了していなくても、装丁や巻末のおまけ漫画などを含めて1つの作品と考えています。単行本を出版する際に、雑誌掲載時の原稿を修正したり、単行本用に表紙やおまけ漫画を描きおろしたりするので、単行本単位で著作物とみなすことができるのです。

まとめ

今回は漫画など、連載モノの著作物のコピーライト表示について、取上げました。
コミックスでは過去に著作権がらみのトラブルが多発しているため、かなり気を配っているようです。
次回は、WEBやアプリなど継続的に更新する物のコピーライト表示について調べてみたいと思います。

前回のテーマ
正しいCopyright(コピーライト)の書き方

次回のテーマ
WEBサイトやアプリなど、継続的に更新する物のコピーライト表示

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